学芸大-援助技術08/07/07
本日は,先週の続きをと思いましたが,まずは,夏休みの課題レポートのお話をしました.援助技術の授業の試験が,ペーパー試験でないのは,もちろん,知識的なものの暗記はとても重要ですが,単にそれを暗記していただけでは,活用できないものなので,その用語や知識を活用して,応用することが重要なためです.そのため,レポート試験を採用しています.文章が書くのが苦手な人も多いかと思いますが,文章は書けないより書けた方が絶対にいいです(当たり前ですね).でも,その習慣がない人は,なかなか,大変な作業かと思います.僕も,この産みの苦しみをたくさんしていますが,常に,日頃から,アウトプットを意識していないと,文章を書く作業はとても大変です.つまり,授業中でもそうだし,本を読んでいるときもそうだし…インプットしているときに,常にアウトプットを意識しておく必要があるということです.そのため,日頃の授業から授業終わりに,授業で学び,獲得したことを『フィードバックシート』に記入してもらっています.単に,意味なく,貴重な授業時間を5~10分も裂いてるわけじゃないんですよ(苦笑).だから,皆さん一生懸命かいてくださいね.僕もしっかり目を通して,次の授業でコメントしていますから.そして,本日は,質問がとても多くあったので,来週すこしじっくりお話ししましょう.医療ソーシャルワーカーに関する質問もたくさんありました.
さて,今日の授業では,先週お話しました6側面と,その構成要素であるスピリチュアル(霊的)側面についてと,そのほかの5側面の詳細の内容を取り扱いました.スピリチュアル(霊的)については,特に,日本国内では,定義が曖昧で,科学的には否定的な意見が多いものです.事実,日本国内では,1990年以降,看護学を初め,医学や心理学等の学問分野で研究が進められ,1995年にWHO総会にて,憲章前文の『健康の定義』の改正案が提出されたことで,更に,質・量研究共に盛んになりました.結局,提出された改正案も全会一致で決まったものではなく,32の定数のうち,反対意見はなかったものの,8カ国が棄権をしており,その中にわが国日本も「健康の定義のような基本的味この変更は,もっと時間をかけ検討すべきである」という理由で,棄権しています.そのほかには,オランダは,「スピリチュアルの説明が必要で,提案の事由が不明確である」理由で棄権しています.一方の賛成国の理由にもばらつきがあります.例えば,宗教の影響を受ける欧米や中東諸国においては,Spiritual=宗教と認め,定義することが出来ますが,ジンバブエは,「スピリチュアルと宗教は関係ない.しかし,特にこれは,伝統医学において最高の効果を得るものに必要である」といった意見もあり,賛成国のスピリチュアルの定義もかなり曖昧であることがわかります.このことから,WHO憲章前文の健康の定義に「スピリチュアル」は入っていません.ただし,健康との関連だけでなく,スピリチュアルな側面は,生活を包括的に把握していくソーシャルワーク領域では重要と考えいいのではないでしょうか.本講でも,取り扱いましたが,科学的か否かは別な問題として,私は,1990年代のスピリチュアルの文献の吟味,WHO憲章の健康の定義のやり取り等の精査,2004年福山和女の6側面の定義と,実際福山とのやり取りやスーパービジョンの中で,以下のものをスピリチュアルと規定しました.『宗教,信念,死生観,価値観,儀礼』を内容とし,具体的なもの(ニーズ)としては,『喪失感・死生観・信念(念願),余暇,生きる目標,宗教,信仰』などを挙げています.これについては,今後,もう少し吟味・検討していく必要がありますが,私が重視したいのは,『人は,生活局面・部面において,こういった側面もあるということ.そして,他の5つの側面は常に相互に関連しあい,影響を与え合っているということ」です.そのために,人を理解する上で,重要なことは,一面的な個人,ひとつの側面のみで個人を理解するのではなく,様々な面をしっかり評価すること,そして,それぞれの面が外界の影響を受けながら,変化していること,その全体が個人であることが重要であると考えています.あと,このスピリチュアルについて,そこまで重要かと,指摘するフィードバックシートをいただきましたが,きっと,生死の場面や,一生障害や病気を背負って生きていく,余命いくばくもない「生」(がんの告知やターミナル)などの場面に遭遇したときにそのことたえが出ると思います.私は,スピリチュアルをどう定義するかは別として,上述した福山や私の取りまとめた『宗教,信念,死生観,価値観,儀礼』をスピリチュアルと捉えたならば,とても重要な要素であるし,スピリチュアルな側面をあえて避けて議論する方が,不自然だと思います.
話が長くなってしまいましたが,レポート課題を以下に書いておきます.
テーマ:『COS(慈善組織化協会)及びセツルメント運動期以降,形成されていったソーシャルワークの理論及びアプローチ,学派などについて,1990年(場合によっては,2000年)頃までの歴史を整理してください.』
ヒント:重要な視点としては,「個人」と「環境」を各時代,各理論ではどのように規定していた.また,「問題」をどのように規定していたかについて,理解を深めてください.
規定:①A4用紙で作成(PC・手書きは問いません).②学籍番号・氏名を記入してください.③タイトルをご自分でつけてください.④参考文献は必ず,記入してください.引用・参考文献の方法については,(別添)日本社会福祉学会・機関誌『社会福祉学』投稿規定〔引用法〕(2002.8.9)を参考とすること【http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssw/pages/policy.htm】 .⑤レポートの返却はいたしませんので,手書きの方は,コピー取っておくことを推奨します.
参考文献は,http://astore.amazon.co.jp/gakugeidai-22ですが,また,ここ数週の間に追加しますね.