学芸大-演習 08/6/30

30 6 月, 2008 (19:23) | 東京学芸大学

今回は,先週・先々週と続けて演習をしました「共感」について,まとめをやりました.


少し厳しい内容だったかもしれませんが,大切なことなので,整理しました.共感の作業をしてもらっていたのですが,皆さんは,すぐ解釈に入ってしまう.しかし,その解釈のための「ものさし」も曖昧で,根拠がないものばかりです.そのことが,事実なのか,憶測なのかを明確にしなければなりません.どうしても,事例検討をするときなど,「虐待」「幻覚・妄想」「認知症」「多問題家族」などなど…インパクトのある言葉に引き込まれてしまいますが,その言葉自体が,事実なのか,憶測なのか,誰かによって規定されてものであるのか,またそれは主観か,客観なのなどを理解しなければなりません.臨床をしていても,すぐ,そういった言葉に当てはめたがる人々がいます.でも,そうすることで,援助者たちが勝手にラベリングをして,安心しているだけではないでしょうか?今回の事例も,「妄想」だとか,「100万円があるのか,ないのか」といったところに焦点があたってしまい,本当にBさんの気持ちに寄り添ったのか…


共感は,支援を行う以前の準備です.信頼関係を構築して,はじめて支援が開始されます.みなさんは,信頼関係が出来上がる前に,アセスメントを行っている(かなり強引に).アセスメントは,情報の収集→情報の整理→分析のプロセスを要しますが,皆さんの解釈・アセスメントは,充分な情報収集もなく,充分な情報の整理もなく,分析もなく,解釈しているだけです.整理・分析には,それなりの尺度「ものさし(つまり理論に基づきます)」が必要になりますが,その尺度は科学的なものではなく,個人の感情・思い込みです.これでは,科学では在りません.


今回は,さらに,SOAPについてもお話をしました.記録法ですが,S=Sobject,O=Object,A=Assessment,P=Planingです.記録の際も,Subject,すなわち主観なのか, Object,すなわち客観なのかを明確にする必要があります.妄想は,看護師の主観でした.看護師の客観はむしろ歩行レベルの低下です.また,医師の「薬の調整がうまくいっていないかなぁ」は,主観です.つまり,もし,ソーシャルワーカーである皆さんが,根拠無く,妄想を客観(事実)としてしまっては危険ではないでしょうか.


また,統合失調症=妄想は,明らかに知識が不足しています.では,統合失調症の症状は他に何がありますか?例えば,陽性症状と陰性症状では,違います.前者であれば,幻覚,妄想,思考障害,奇異な行動などが挙げられますし,後者であれば,それまであった性質や能力が失われるため,感情鈍麻,会話の貧困,快感消失,社会性の喪失などがあります.こういった知識も必要になってきます.つまり,もし皆さんが,アセスメントや分析をするのであれば,もっと多面的にBさんの全体性を把握する必要があります.


つまり,アセスメントをするのであれば,もっと科学的に行うべきです.前回までの授業では,まだその前段階の「共感」,相手の気持ちにどこまで寄り添えるかをやってきました.アセスメントについては,後期にじっくりやっていきますので,ゆっくり,一歩一歩やっていきましょう.


まずは,相談に乗る前段階の信頼関係の構築,そして,相手に言葉に素直に耳を傾ける傾聴と,共感のトレーニングをしています.


だんだん,専門的な内容になってきたので,大変かもしれませんが,ソーシャルワーカーはただ無心にその人の話を拝聴する姿勢が大切です.話を聞いているうちに,変に憶測で,妄想(空想)しないこと.が,大切だと思います.


でも,この半年,皆さんの力は確実についてますので,安心してください.