「疲れてできない」の言葉の重み.
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本日5時起床. 昨日は,知的障害者作業所の職員さんとの勉強会の講師でした.19時から始まった事例検討会は,21時過ぎに終了.その後,いつも通り飲み会をしました.帰宅は,1時.その後,少し資料整理をして寝ました.本日は,一日病院勤務です.土曜日なので,予約面談が既にたくさん入っています.
さて,本日は,昨日の勉強会のフィードバックをしたいと思います.
事例:「サービス利用につなげる為にできることは何か」 利用者:Bさん(女性・50歳代・愛の手帳:3級・障害程度区分3)
高齢の両親と,妹との四人暮らし.両親は高齢で,父親は病気を患い,母親は身体的に問題はないが,障害を持つ娘二人と父親の看護・介護で疲れきっている.
本人は,ガイドヘルパーを利用して外出したいとよく言っている.
事例提供者は,母親がこの家族のキーパーソンであり,母親がいなくなってしまうと,この家庭の生活は崩壊してしまう恐れがあり,サービス利用を促し,母親のストレス等の負担を軽減したいと考える.また,一方で,Bさん自身のニーズでもあるガイドヘルパーの利用へとつなげていきたいが,母親から「今は家族の生活を保つだけで精一杯で,それ以上のことはできない」「疲れてできない」との訴えもあり,サービス導入ができないでいる.
以上のような事例でした.この事例は,とても有用で,学びどころの多い事例だと思いました.いつもどおり,参加者からのコメントをもらい,事例の核心に迫っていきました.話し合われた内容としては,①一時的にでも母親と子どもを引き離す支援.具体的には,短期入所などのサービスを利用してはどうだろうか,という意見や,②登録が済んでいるヘルパーステーションから働きかけてもらい,カラオケ(本人は大好き)などの企画ものの提案・参加や集団での企画の提案・参加をしてみてはどうだろうか,という意見,③母親自身がサービス利用をどのくらい理解しているかなどの,母親に関する情報収集などが話し合われました.どの視点もとても重要なものです.
そして,私の方から3つの論点を提示しました.①家族をシステムとして捉える視点,②母親のアセスメント,③サービス利用の弊害です.そして,以下のようなコメントをしました.
まず,①の家族をシステムとして捉える視点とは,Bさん単体,母親単体のニーズに対してそれぞれ対応していくのではなく,家族をシステムと捉え,家族内の相互関係性・相互作用性に着目し,その関係性を加味した,家族ニーズを探ることが重要であること.
②母親のアセスメントとは,母親自身の能力査定であり,ストレングスの査定です.具体的には,問題解決能力や問題対処能力,社会性や社交性(対人関係能力),情報収集能力,交渉力や契約行為等の遂行能力,サービスについては,サービス自体(種類や内容)を知らないのか,サービス自体は知っているがそれを有効に活用できないのかなどが挙げられます.
最後の③サービスの利用の弊害については,2つ挙げました.これは,1990年代以降,社会福祉基礎構造改革に伴うサービス利用方法の変化によって,措置制度から利用・契約制度に変換されることによって,新たに必要となったソーシャルワーカーの役割・機能といえるのではないでしょう.
それは,(1)サービス利用を促進するあるいは選択するための情報提供や利用促進のサポート,(2)適切な選択が遂行できるように保障する成年後見制度などの意志決定補佐制度を活用したサポートです.そして,ここで重要となってくるのが,②の母親のアセスメントです.このアセスメントによって,具体的なアプローチや対応方法が変わってきます.例えば,情報収集能力や情報処理能力を査定した場合, 情報収集能力が高いが,それを処理する能力が低い場合,ペーパーでたくさんの情報を短時間に提供する事はしません.必要なサービスをある程度整理したうえで提供していくことになります.また,渉外能力や交渉能力,コミュニケーション能力を査定した場合,これらの能力が低い場合は,例えば,申請・相談窓口にあらかじめ電話を入れておく配慮や,名詞やメモを添付して,スムースに申請や相談ができるように配慮しておきます.
手をとって,申請や相談窓口に一緒に足を運ぶだけが支援ではありません.相談者や利用者の能力を的確に把握することで,適切な量のサービス提供,支援ができるのです.
そして,最後に,この事例について,子どもが知的障害を持っている参加者から,『私は,母親の「疲れて何もできない」という言葉に,共感できました.私も同じだと思います.疲れているときは,外のサービスを受けるのが億劫になる.外に出さなくなります.それはなぜかというと,外に出すことで気も遣うし,外で何かあったらまたその対処で疲れてしまいます』と語ってくれました.これは,正直,私自身も発想できなかった視点です.そして,ある程度ケアプランやガイドヘルパーの企画などを提示してもらって,それを利用するか,しないかのYes or Noで選択することも時には重要だと語ってくれました.我々援助者は,どうしても,本人やご家族の意思や主体性の尊重といった視点から,訴えてくるニーズばかりに目がいきがちですが,外に出さない一つの要因に「疲れて何もできない」という言葉が関連していたことに,ハッと気づきました.「疲れてできない」は,とても重要で,重たいメッセージだったんですね.我々援助者は,「疲れてできない」からこそ,サービスを導入すると考えますが,本当に疲れきっている時は,サービスを利用する気力もないんですね.
簡単なまとめですが,とても有意義な時間でした.
*尚,上述のケースは,問題の本質を変えない範囲で修正・加工されています.
『知的障害のことがよくわかる本』 支援の第一歩は,正しい理解から始まります. 基礎知識から社会支援まで
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