介護職員の医行為
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タイトルでもありますように,特別養護老人ホーム(以下特養と略す)の介護職員による吸引や経管栄養のケアが一定条件で可能となります.
少しそのお話をしたいと思います.厚生労働省は3月25日,「特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」(座長=樋口範雄・東大大学院法学政治学研究科教授)の第3回会合を開催し,特養の介護職員が一定の研修を受け,医師の指示の下で看護師と連携しながら口腔内の吸引や経管栄養を行うことについて,違法にはならない行為(違法性が阻却される行為)とする報告書を大筋で了承しました.
この報告書では、特養で行われる口腔内のたんの吸引(咽頭の手前まで)と胃ろうによる経管栄養(チューブ接続などは看護職員が行う)について,介護職員が研修を受けた上で,医療・看護職員との連携の下であれば行えるとしたものです.
条件としては,①施設内委員会の設置や記録・マニュアルの整備など安全確保のための体制整備や,②入居者本人の同意を書面で得ることなどが必要とされています.
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さて,ここでの問題は,他の施設ではどうなのか? ということです.ここ数日,高齢者の利用できる施設をご紹介してきましたが・・ 特に,老健施設でも同様の行為が認められるように早急に検討をする必要があります.
事実,老健施設を申込みしても,胃ロウ(経管栄養)や吸引がたった一日3回でも,NGが出てしまう施設ばかりです.本当に,この二つがあると,殆どの施設は受けれてくれません.それか,びっくりするくらい待機がかかります.
また,一方で,このような人が療養型の病院(医療療養型)に入院できるかと言うと,医療区分といいまして,その人の医療依存度・必要度に応じて,三段階に区分されています.そのため,医療区分の低い,つまり医療依存度や必要度が低い人が,病院に入院することで,病院自体の収入が減収してしまう為,どの療養型病院も,この医療区分が高い,つまり医療依存度や必要度が高い人(患者)を入院させる傾向があります.
そして,この胃ロウや数回の痰の吸引は,医療への依存とみなされず,医療区分も低いレベルに分類される為,療養型病院では,単に胃ロウであるとか,数回の吸引があると言った理由で,入院することが困難な状況にあります.
そういった意味では,特養もそうですが,老健も早急に検討を進めなければなりません.
やはり,この点については,会合のなかで,三上裕司委員(日本医師会常任理事)も,特養以外の施設にも吸引が必要な人がいと発言し,「特養にだけ限定するのは合理性がないのでは」と疑問を呈しました.
これに対し事務局側は,今回は吸引などに一定のニーズがあり,医師や看護師との連携体制が取れる施設として特養に限って議論したと説明し,「今後の課題として、他の施設はどうなのかということは常にある」と述べています.
さらに、三上氏は「これは違法性の阻却を目的としているので、(特養以外の)他の所では全部違法とされてしまうのではないか.特養の正規職員は阻却されるけど,それ以外は少し危ないよということになり,問題があるのでは」とも述べました. これに対し樋口座長は,検討会では特養での吸引行為などに絞って検討し,違法性が阻却されるための条件を整理したということを,もっと明確に打ち出すべきではないかと提案しました.
その後も,今後の課題として「医行為」の概念の整理が必要で,法改正も必要になってくるのではないかといった意見が出たり,村晴恵委員(日本介護福祉士会副会長)の代理として出席した内田千恵子氏は,吸引や経管栄養をすることで労働強化につながると懸念し,体制の整備や研修を強化するよう求めました.また,実施者を介護福祉士に限定するのはマンパワーが足りない中で厳しいが,対象を広げて「『介護士』と一くくりにし,誰でもいいですよとなれば,利用者に迷惑が掛かるのでは」と述べました.
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私は,こういった議論がドンドン行われればいいと思っています.
誰の為の介護なのかをもう一度考えなければいけないですね.と,同時に,胃ロウや吸引は安全に生活する為に行っている処置であり,つまり,「患者」ではなく,「生活者」の状況である為,生活の延長行為として,考えられるのが自然だと思います.
一方で,手技などについては,一定の基準や水準,講習や研修をしっかり行う必要があるかと思います.
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臨床をしていても,胃ロウ以外はとても状態がよく,施設での生活が十分可能な方であっても,施設のマンパワーの問題のみで施設への入居が出来ない方がたくさんいるのが現状です.
『「平穏死」のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか』 大学の医療福祉論で,経口で食事が出来なくなった場合,どうするか? と言うテーマで議論をします.自分だった・・ 親だったら・・ 祖父や祖母であったり・・ パートナーであったら・・ 友人であったら・・ どうですか?
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