実習 ~伝承作業(業を伝える)
4時半起床.朝から『けあサポ』の上がり原稿のチェックをしていました.本日も病院勤務です.8月は,大学生・専門学生共に夏休み・実習のため,私は病院での勤務が連日続いています.当院にも,9月始めに実習生がきます.
今,病院や施設には,多くの学生が実習をしているかと思います.私は,とても微妙な立場で,実習を受け入れる側でもあり,学生を実習先に送り出す立場でもあります.だから,学生の気持ちもわかるし,受けれ先(実習先)の気持ちもわかります.先日も,とある病院から,実習生への指導法について,相談を受けました.私たちが学生の頃は,医療機関は,社会福祉士の実習先の指定施設ではなかったので,医療機関に実習に行く学生は,学校の単位実習か,自主的な任意の実習でした.そのため,そういった学生は,皆,就職先は.病院を希望したものでした.でも,今みたいに病院にソーシャルワーカーがたくさんいた時代ではないので,就職はとても大変でした.募集,一人の枠に何十人が殆ど,多い病院では何百人と集まりました.
しかし,今の学生は,病院で実習するからと言って,必ずしも病院に就職するわけではありません.そういったところから,実習指導者は,どのように指導していっていいのか,悩むようです.医療領域のソーシャルワークは,ソーシャルワークの知識・技術と共に,医学の知識や,医療制度の知識などが必要となるため,かなり限定されますし,専門的な実習になります.医療分野特有のコミュニケーションや言語,ルールなども多くあります.医療機関において,社会福祉学・社会学をベースとするソーシャルワーカーは,異質な存在なのです.もちろん,たくさんあわせなければならないこともあります.また,多くの専門職と協働して,支援を行っているため,「見学に来ました」とか,「自分の性格に合っているか… 」とか,相性のチェックや見学者というスタンスでは,受け入れる側も困ってしまうのが実情です.これは,何も病院だけでなく,他の施設も同様だと思いますが・・・ 特に,医療機関では,それを感じます.
さらに,病院での実習は,会議やカンファレンスの同行,面接の見学等ができたとしても,実際,学生が面接をしたり,ケースを動かしたりすることが出来ないため,学生自身も「何をしていいのかわからず」困っているようです.ソーシャルワーカーは,面接や会議以外でも,電話連絡や他職種との情報共有,記録,面接の準備,資料の補充,会議の準備・・・などなどなど・・・ ただ机に座っていると見えるときも,常に頭の中では,同時進行でケースを動かしたり,待ったり・・しています. 実習生は,疑問に思うことを,まず自分で分析し,検討・吟味をし,それをスーパーバイザーや実習指導者に聞いてみる.「なぜ,~なんですか」ではなく,「先ほどの~,私こう思いましたが,~なんですか」といったようにドンドン質問する.そして,何しろ,観察する.ソーシャルワーカーがやったこと,言ったこと・・・すべてを五感を使って,感じること,観察することが大切です.
私の実習では,学校指定の実習日誌のほかに,「観察ノート(サブノート)」を書いてもらっています.この「観察ノート(サブノート)」については,日に日に多くなっていきます.近々の実習では,一日ルーズリーフ両面で3枚といったところがスタンダードです.勿論,実習中は不眠の状態ですが,たった10日(12日)間なので頑張ってもらうしかないです.この作業自体が,医療実習の醍醐味であり,一番重要な作業です.実習生が観察したことに,実習指導者が,なぜそうしたのかなどの理由や意味を伝える作業です.これを伝承作業(業を伝える)といいます.この伝承作業は,実ととても大切な作業なのです.この伝承作業が専門家を育てるのです.そして,この伝承作業は,なかなか大学の教室の中では出来ないことです.わたしが,いくら臨床をやっていて,たくさんのケースを持っているからといって,それを事例として,場面としてロールプレイしたり,解説したりすることは出来ますが,その現象自体を立体的に,実際体感していなければ,細かいニュアンスなどが伝わりにくいのです.もちろん,私の大学や専門学校の授業では,こういった臨場感を大切にしていますが,やはり限界はあります.
そして,実習後の学生は,本当に多くのことを学び,成長しているものです.事実,夏休み前と,後では,まず,目つきが違う.そして,問題の捉え方が鋭い.更に,的確に状況を把握・説明できる.と,いった変化が見られます.
実習中は,辛いだろうし,納得いかないことも多いだろうし,辞めたい時もあるだろうし,自分の思いが伝わらないときもあるだろうし・・・でも,やめないこと.諦めないこと.続けるころ.最後までやり遂げること・・・が大切です.絶対にいい経験になりますので,最後まで,体調管理万全に,取り組んでください.