死ぬ瞬間 ~生きる者の記録

7 8 月, 2008 (08:48) | コラム(ライフスタイル), 後継者育成事業, 推薦図書, 東京学芸大学

5時起床.いつもどおりの朝です.今日も暑くなりそうですね.夏本番です.朝の暑さが,一ヶ月前のそれとは違います.本日も,一日病院勤務です.移動がない分,快適です.

病院でソーシャルワークをやっていると,本当に多くのケースに遭遇します.それは,生きることであり,老いることであり,病うことであり,死ぬことです.これは,人の4つの苦悩とされています.今日は,この死ぬことについて,少しお話したいと思います.実は,昨日,末期がんの入院相談をしたいのですが,ひとのその死ぬ瞬間をどのようにむえるのか,どのように生きるのか・・・その人の今までの生き方はどうだったのか.この世で遣り残したことはないのか・・・などなど,ソーシャルワーカーとして様々な思考をするものです.以前,私が担当しケースをまとめたエッセイがありますが,今日はそれをここで紹介することできません.が,山田一郎さん(77歳・男性)を例に医療ソーシャルワーカーのかかわり2ページにまとめたエッセイです.タイトルは「時間と場所を保障する-MSWとして-」です.出典は,『地域づくりの福祉援助 コミュニティワークはじめの一歩』高橋幸三郎編著,ミネルヴァ書房.p138-39.

文中からの一節 ~わたしは,ただ毎日,山田さんの目線に合わせてベットの傍らに座り,思いに耳を傾けました.やっと,ゆっくり話を聞いてくれる人が現れたといいながら. 「つらいことはありませんか」との私の問いかけに,山田さんは「深い深い眠りについてく(死んでいくこと)ことへの不安,そしてわたしの77年の人生を誰かに聞いてもらいたいと思っていたが,誰にも言えず,話せないでずっと一人でこらえてきたことです」と答えました.~

人の死んでいく場面は,とても衝撃的です.学生の皆さんに医療ソーシャルワーカーを紹介するとき,この「死」の問題は避けては通れない道なのですが,やはりショックが大きいようです.それは,私も同様です.が,その中でも,プロとして凛としておかなければならないときもあり,ソーシャルワーカーとして意志をもって,接していく必要があります.もちろん,そこには人間的な関わりもあります.人は,必ず死んでいきます.それは,生まれたときから課せられた使命なのです.ただ,その「死」に至るまでは,それぞれが自由に創意工夫し,その人らしく生きる権利があります.ソーシャルワーカーは,この「自由時間」の時々で,共に生きる仕事だと思います.

そこで,今日の推薦図書.ホントにいい本です.医療ソーシャルワーカーを目指す人は絶対に読んでください.人の死ぬ瞬間はどうなのか,人の生き様ってどうなのか・・・ 力強く教えてくれる一冊です. 新聞記者である佐藤健氏は,自らの病との闘い,葛藤,苦しみを自らの言葉で教えてくれます.死ぬそのときは,側近の萩尾記者によって,丁寧に,そして佐藤健氏らしく,その最後の瞬間を記しています.『生きるものの記録』佐藤健氏,毎日新聞社.学生で夏休み何冊か本を読むことを目標としている方は,是非その一冊になりますよ.