青年・成人期自閉症者の発達課題と,強迫性障害の理解・対応について
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本日は,突然ですが・・昨日の勉強会のフィードバック,報告をしたいと思います.
昨日は,午前病院勤務,午後から院外の会議,そして夜間に知的障害者の作業所職員の勉強会でした.
昨日の事例は,Bさん(男性・20歳代),愛の手帳4度,区分認定3 自閉症といった人物像です.
事例のテーマは,「強化されるこだわりへの支援の在り方」についてでした.
事例の概要を少しお話しすると,ここ一年の間に,こだわりが強化され,強迫的傾向が見られるようになったという事例です.この強迫的傾向については,幾つか具体的な例を挙げてもらい巻いた.
そこで,私の方から「青年期・成人期自閉症者の発達課題」と,「強迫性障害(強迫神経症)」について講義を行いました.
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まず,「青年・成人期自閉症者の発達課題」についてですが,これについては,多くの先行研究を紹介しました.
例えば,加藤ら(1993)の研究では,青年・成人期に至り,こだわり行動が半数の者に示されていることや,強迫的なこだわりが増えていること,そして,こだわり行動への対応をどうすべきかが指導上の困難点として強く指摘されていることを提言しています.つまり,青年・成人期自閉症者は,強迫的こだわりが増える傾向にあり,それへの対応が重要であることをしています.
また,小林・村田(1990)は,「強迫傾向は青年・成人期自閉症の中心的精神病理として重視する必要がある」と述べており,更に森(1992)は,青年期に入った自閉症の示す「自分という基点の不確かさ」の存在を強調し,そこからくる「質問魔」,「確認魔」の青年達の実例を示しており,「自分という基点の不確かさ」と,そこからくる不安や心理的葛藤をいかに克服して心の安定化を図っていくかということが青年・成人期自閉症の大きな発達課題であると指摘しています.
更に,若林・杉山(1987)は,自閉症にみられる青年期パニックに2グループに分け,ひとつは,「青年期という節目に引っかかって,混乱をきたしているグループ」と,もうひとつは青年期にいたって著しく退行し「重篤な臨床像の変化を生じるグループ」であるとしています.このことは,加藤ら(1993)の調査対象者においても,この両グループの存在が認められています.とりわけ,後者の青年期退行タイプについては,近年,強度行動障害の一類型として注目されており,その原因解明と指導法は今後の大きな課題とされています.
以上のことから,青年期及び成人期自閉症者で,強迫的こだわり行動が増えてきたり,強迫的傾向に陥るケースがあることを示しています.
と,言うことを整理する中で,事例発表者と,Bさんを実際支援している他2名の援助者も,この状況に大きくうなずいていました.
≪参考文献≫
加藤義男・木村真・高橋昇・石母田明・北村嘉勝・三田祐一(1994)「青年・成人期自閉症の適応の現状と課題一迫跡調査を通して-」『岩手大学教育学部研究年報第53巻第2号』,pp.91-105.
小林隆児・村田豊久(1990)「201例の自閉症児追跡調査からみた青年期・成人期自閉症の問題」『発達の心理学と医学』1巻4号,pp.523-37.
若林慎一郎・杉山登志郎(1987)「自閉症の転帰と成人期の問題」(山崎晃資・栗田広編『自閉症の研究と展望』東京大学出版会),pp.75-99.
森正子(1992)「青年期に入った自閉症たち」『第8回発達保障講座講義録要旨集』全国障害者問題研究会,pp.36-9.
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次に,強迫性障害’強迫神経症について整理しました.
ここでは,前述の「強迫傾向は青年・成人期自閉症の中心的精神病理として重視する必要がある」と言う指摘から,この強迫傾向及び強迫性障害の理解と,その障害や症状への対処法を整理することをもくてきとしました.
まず,強迫性障害について用語の整理をしました.強迫性障害とは,精神疾患のひとつですが,従来強迫神経症と呼ばれていました.またDSM-IV(『精神失調の診断と統計の手引き』第4版)における精神の失調のひとつの分類であり,強迫症状と呼ばれる症状に特徴付けられる不安障害であるとされていることを確認しました.
また,自閉症や,アスペルガー症候群,チック,自傷行為,醜形(しゅうけい)恐怖,摂食障害,依存症などの疾患は強迫性障害と広義で関連があるとされており,強迫スペクトラム障害(OCSD)と整理されていることも確認しました. その上で,強迫症状について整理を行っていきました.
強迫症状とは強迫性障害の症状で,強迫観念と強迫行為に分類されます.以下,簡単に整理すると・・
◎強迫観念◎
強迫観念とは,本人の意志と無関係に頭に浮かぶ,不快感や不安感を生じさせる観念を指します.強迫観念の内容の多くは普通の人にも見られるものですが,普通の人がそれを大して気にせずにいられるのに対して,強迫性障害者の場合は,これが強く感じられたり,長く続くために,強い苦痛を感じています.ただし,単語や数字のようにそれ自体にはあまり意味の無いものが執拗に浮かぶ場合もあり,行動療法が行いにくいため,強迫行為よりも治療が困難です.
◎強迫行為◎
強迫行為とは,不快な存在である強迫観念を打ち消したり,振り払うための行為であり,強迫観念同様に不合理なものですが,それをやめると不安(感)や不快感が伴うためになかなか止めることができない状態になります.その行動は患者や場合によって異なりますが,いくつかに分類が可能で,周囲から見て全く理解不能な行動でも,患者自身には何らかの意味付けが生じている場合が多いです.
そして,大半の患者は自らの強迫症状が奇異(きい)であったり,不条理であるという自覚を持っているため,人知れず思い悩んだり,恥の意識を持っている場合が多いといわれています.また,強迫観念の内容によっては罪の意識を感じていることもあるため,自分だけの秘密として,家族などの周囲に内緒で強迫行為を行ったり,理不尽な理由をつけてごまかそうとすることがあります.逆に自身で処理しきれない不安を払拭するために,家族に強迫行為を手伝わせようとする場合もあります.これは「巻き込み」といいます.
この「巻き込み」も特徴のひとつです.「巻き込み」とは,強迫行為が自分自身の行為で収まらず,家族や親しい友人に懇願(こんがん)したり強要したりする場合があり,これを「巻き込み」といいます.これにより,患者のみならず周囲も強迫症状の対応に疲れきってしまうことがあります.巻き込みのように,周囲が患者の強迫行為を手伝うこと(患者にかわって何かを洗ったり,誤りがないか確認するなどの行為)は患者の病状を維持したり,かえって悪化させることが明らかになっているため,極力避ける対応を取ります.ただし,これを急にやめることは患者にとって苦痛が大きく,一時的に症状が悪化する場合があるため,患者と治療者や家族が必要性を話し合った上で,段階的に巻き込みをやめていく必要があります.
最後に,原則として強迫観念や強迫行為の対象は自身に向けられたものであり,これによって患者が非社会的になっても,たとえば犯罪のような反社会的行動に結びつくことはないとされていることを確認しました.
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これを踏まえ,強迫性障害の治療・対処法について整理しました.具体的には,行動療法や認知行動療法,抗うつ薬を用いた薬物療法が有効といわれています.
行動療法ではエクスポージャーと儀式妨害を組み合わせた方法(ERP:Exposure and Ritual Prevention)が使われることがあります.エクスポージャーとは,恐れている不安や不快感が発生する状況に自分を意図的にさらすもので,儀式妨害とは,不安や不快感が発生しても,それを低減するための強迫行為をとらせないという手法です.これらを患者の不安や不快の段階に応じて実施されます.行動療法は単独でも用いることができますが,強迫観念が強い場合,薬物療法導入後に行動療法を行う方が成功体験を得られやすいとされています.
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以上のことから,まず,援助者が,上述の「巻き込み」に反応してしまっているのではないかということを確認しました.つまり,福祉援助では,共感や傾聴,利用者の自己決定などが尊重されるために,援助者がこのBさんの強迫行為を手伝っていないかと言うことです.もし,これを手伝っている場合,上述のようにBさんの症状を維持したり,かえって悪化させてしまっている可能性があります.
また,薬物療法と,(認知)行動療法をミックスさせた支援が重要であることも指摘し,まずは,Bさんの安定を図るために精神科の受診をしてみてはどうだろうかと言うことも提言しました.同時に,本人=家族=作業所=医療機関が一貫した対応や,方針を相互に確認し,支援していく必要があることを整理しました.
その後は,フロアーと,事例提供者と,具体的な医療機関へのアクセスの方法や,具体的な声かけや支援方法について検討しました.
いやいやここでは書ききれないくらいたくさん話し合いをしました.そして,この事例発表が終わった後は,保護者会の運用ついて私の方からグループワークの方法論を基づいた提案,方法を伝授しました.
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研修(勉強会)終了後,いつもどおり,打ち上げ(お食事会・飲み会)をしました.研修が終わったのが22時近かったので,お店を出たのは,午前0時過ぎでした.ここでは,いつもどおりクダラナイ,タメになるお話をダラダラとしました.
「やっぱり,バブル時代はよかった」とか・・ 「バブル期はすしバーなるものがあった」とか・・ 「鰻重がミルフィーユのように層になっている」とか・・・ うちわ話ですみません.
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本日は,一日病院勤務です.今日も一日頑張るぞ!
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