論文のアブストラクト(要約)
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本日は,ここ数日,ブログメイルで問い合わせの多い話題をしたいと思います.
その話題とは,先日私が発表した論文の入手方法です.
今回掲載された論文は,『医療と福祉』という雑誌で,医療ソーシャルワーカーの職能団体である日本医療社会事業協会から発刊されているものです.
そのため,一般の書店で並ぶことはありません.
入手したい方は,直接,日本医療社会事業協会に問い合わせてみてください.
日本医療社会事業協会ホームページ:http://www.jaswhs.or.jp/
雑誌名:『医療と福祉』No.87,Vol.43(2)
この中に私の論文が掲載されています.
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さて,今日は,その論文のアブストラクト・・ 要約を少ししておきたいと思います.
論文タイトル:「回復期リハビリテーション病棟におけるソーシャルワーク支援の検討-大腿骨頚部骨折患者及び家族の入院60日以降の取り組み-」
まず,研究の背景ですが,近年,診療報酬改定に伴い,連携に関する加算が整備されてきました.例えば,大腿骨頚部骨折の患者を対象とした連携体制については,病院間で地域連携パスを使用することで,急性期病院,回復期病院共に地域連携診療計画管理料・地域連携診療計画退院時指導料が加算されるようになりました.これにより,円滑な連携と医療機関の機能分化が促進してきました.ここまでは,とてもいいことですよね.患者にとっても,家族にとっても,専門の病院で専門的な治療やリハビリができる,ということですから.
しかし,です.退院までの日数や退院の日数の短縮化のみに主眼が置かれてしまい,肝心の患者・家族のニーズの評価や精査,患者・家族の自己決定が十分に検討されないままに転院や入院に至っているのではないかという反省もあります.
事実,私は,複数の連携パスの会議に参加していますが,議論される,報告される内容は,在院日数が短縮したことのみで,肝心のサービス提供の精査がなされていないのが現状です.それどころか,パスを利用することで,急性期病院から回復期病院への転院までの日数が約30日で,また回復期病院の入院日数は,約60日で,殆どが自宅へ退院している・・ つまり,日数が短縮傾向にあるという報告ばかりなのです.私は,この数字ばかりが先行し,患者・家族の取り組みの実態や状況・状態を吟味しないまま現状の連携の在り方に疑問を感じたのです.
このことから,在院日数や円滑な連携,退院支援のみに着眼されてしまい個別ケースの質的な検討や平均に乗らないケースについての精査が重要であると考えました.特に,平均在院日数である60日を超えた患者・家族は,身体機能や障害の固定化に伴い,医療機関での課題を達成したかのように思われます.また,60日以降は,単に介護施設等の待機期間と思われることも少なくありません.
そこで,この論文では,大腿骨頚部骨折患者及び家族の入院60日以降の取り組みや状況・状態の状況調査をすることで,回復期リハビリテーション病棟におけるソーシャルワークの在り方を検討することを目的としました.
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先行研究の吟味と研究方法,考察については,膨大な量になってしまいますので割愛します.詳しくは,論文をご覧ください.
ただ,少しお話しすると,先行研究は,私が2009年に発表した論文を採用しています.この論文タイトルは,「回復期リハビリテーションにおける患者家族のニーズ精査とアセスメントの考察-大腿骨頚部骨折患者及び家族を中心に-」という論文です.これは『医療ソーシャルワークNo57』に掲載されています.これについては,購入することができます(http://www.hobunsya.com/nbook.htm#msw57).
研究方法は,既存文書(ケース記録)を原資料とし,文節・単語レベルに分け「キーワード」として抽出した.ワード数は296個で重複するものを整理した結果,105ワードとなった.このワードを横軸で,「人間の理解の6側面」(福山:2004)及び「人の生活におけるニーズ整理:6側面」(露木:2006)を基に,身体的,社会的,心理的,精神的,物的,霊的側面へと振り分けました.
更に,縦軸として,「潜在化しやすい取り組みや状況・状態」と「顕在化された取り組みや状況・状態」に分けました・
考察は,各6側面について,それぞれ考察されたことを整理しました.この考察は,是非論文で読んでみてください.とてもおもしろい結果が出ています.
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最後に,結論ですが,少し整理しておきます.
この論文では,回復期リハビリテーション病棟入院60日以降の患者家族に対するソーシャルワーク支援の検討を目的とし,大腿骨頚部骨折患者及び家族を中心に,入院60日以降の患者家族の取り組みや状況・状態に関する状況精査を行いました.
それによって導き出された結論は・・・ 本調査研究の質的研究から分かることは,回復期リハビリテーション病棟入院60日以降の時期は,表面的・視覚的には,ニーズや患者家族の取り組みが減少しているかのように錯覚するが,回復期リハビリテーション病棟入院60日以降の患者家族の特徴としては,取り組みや状況・状態が内在化しているため,ソーシャルワーカーをはじめ,援助者が意図的にかかわりを持たない限り,問題や課題などが表出しにくいことでです.
以上のことから,回復期リハビリテーション病棟におけるソーシャルワークの留意点は,単に視覚から入ってくる情報や顕在化された情報のみにとらわれて,入院60日以降の支援計画や退院計画を策定していくのではなく,潜在化された側面を含め包括的,総合的に支援計画を策定していくことが重要であることがわかります.
以上が,今回の論文のアブストラクト・要約です.もっと,書きたいことはあるのですが,このくらいにしておきたいと思います.
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