事例検討・勉強会の報告~罪悪感からの開放

5 12 月, 2009 (08:50) | コラム(ライフスタイル), コラム(介護・福祉・医療), 推薦図書

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本日5時起床.

昨日は,一日病院勤務の後,夜間の勉強会でした.

本日は,昨日の勉強会の報告をしたいと思います.

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昨日は,第15回目の勉強会・事例検討会でした.いつもどおり,事例の報告をしてもらい,それについてフロアーで協議,共有しました.

昨日の事例は,Aさん(男性 20歳代後半) 自閉症 愛の手帳2度 障害区分認定5の方でした.特徴としては,叩く,つねる,噛むなどの他害行為があることです.その他,こだわりもあります.これらの行為については,利用当初に比べ,だいぶ軽減してきたようですが,やはり,時々,他害行為やこだわり行動が出るようです.

事例全体を,事例報告者に報告してもらい,フロアーから質問や更に深めたい点について論議してもらいました.今回の勉強会では,同じような利用者を抱えていることもあり,具体的な支援方法やコミュニケーションの方法,対処法などが話し合われました.

例えば,言葉かけについて話し合われましたが,「自閉症の利用者に対して多すぎる言葉かけはダメ」であることや,伝え方でも,あらかじめ本人との合意・同意を取った上(例えば,一つにするという同意・合意)で,本人が,訴えた場合などは,「二つがダメ」ではなく,分かりやすく,簡潔に,「一つね」と声をかける方法などが提案されました.これを提案された参加者の方も,この方法は,利用者のご両親から伝授してもらったことだといいました.

利用者は,様々なので,それが適応できるアプローチかは別な問題として,このように関わりの選択肢や方法を増やしておくことが重要だと思います.

その他,詳細の内容については,割愛しますが,私が整理,助言したことを以下3点にまとめます.

まず一つ目は,『他害,自傷,パニックへの対応』です.

これについては,多くの参加者からのコメントをもらいました.例えば,対処方法や対応法に関する議論やこの行為自体が,コミュニケーションの手段なのか,自己表現の方法なのか,サインやシグナルなのか・・.どれも間違えではないでしょう.

そこで,私が提案したのは,根拠や事実の積み重ねで,普遍化できるものなのか,そうでないものなのかを見極める方法です.つまり,パニックや自傷・他害の行為が出た時の状況を記録しておくことです.

具体的には,①日時,②場所,③状況です.一行でいいのです.これを積み重ねることが重要です.積み重ねることで,この行為自体には,パターンがあるのか,それともパターンが無いのかを分析することが出来ます.

もし,パターン化されたものであれば,未然にその状態を防ぐことも出来ますし,そうなった場合の対処も可能となります.

根拠や事実の積み重ねで,その方のパターンを分析する方法についてお話しました.

次に,『母=子システム』への介入です.

従来の支援モデルでは,子に対する支援を中心に,母はその背景に過ぎませんでした.しかし,今回の事例やまた多くの事例を検討していく中で,正・負の意味で母子の密着・密接度は高いです.

そういった意味では,母を労わり,心配する声も聞こえますが,だからといって,子どもを施設やグループホームに入れてしまえばことが片付くわけでもありません.

つまり,母と子を一つのシステムとして捉える視点が重要です.このときの支援視点は,子のみ,母のみではなく,つまり子と母とを分離して支援するのではなく,一つの塊として支援していきます.具体的には,母と子の相互作用やコミュニケーション,関係性に着目して支援をしていきます.

これについては,また別の機会でお話をしましょう.

最後に,『援助関係』についてです.

これは,今回の事例提供者や他の援助者も抱える悩みです.というのは,重度の利用者などの関わりを集中的にしなければいけないケースや,特定の援助者との関係のみ良好に築ける利用者のケースなどです.

このとき,付きっきりの援助が行われますが,援助者は,このことに「罪悪感」を感じます.つまり,他の利用者と平等にしなければいけないのにという葛藤です.

私が整理したことは,当然重度の利用者や利用直後の利用者,対人関係を上手に取れない利用者などに関しては,一時的に集中的に関わる必要があります.つまり,行為自体まったく問題ないし,罪悪感を持つ必要がないということです.

が,もっと重要なことは,そう思い,意識化でき,確認したことに意味があるのです.

つまり,これについて何も感じないことが問題で,そう思い,立ち止まり,確認し,意識か出来ているのだから大丈夫なのです.

このような罪悪感や後ろめたさを感じて支援をしている人も多いのではないでしょうか.しかし,福祉分野における「平等」とは,「量が同じ」ということではありません.必要な時に,必要な量の声かけや支援が出来ることが重要で,関わりや声かけの量を均一にすることではありません.

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以上,雑駁ですが,昨日の事例検討会・勉強会の報告です.

本日は,一日病院勤務です.

 『分析臨床での発見―転移・解釈・罪悪感』

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